いつまで失われた30年に囚われるのか?

9月のFOMC会議でアメリカの政策金利を5.5%に凍結して2024年末と2025年末の政策金利の予測を6月対比それぞれ0.5%上向きで調整された5.25%及び4.0%で提示した。11月開催予定のFOMC会議でも高金利の長期化(High for longer)、2024年末にも5%台の政策金利を維持するかどうかに関心が高まっている。

今のアメリカの連邦金利は5%台の高い金利を長期間維持していた1990年代と似ているとみている人たちもいる。来年以降のアメリカの経済予測はGDP成長率が少し下落すると予想されているが、GDP ギャップ率はプラス(+)状態を維持する中、失業率(4.0%)台の低い失業率が続くなど、良好な雇用状況も継続される可能性が高いとみている。これにより、ここ1年間下落した物価上昇率も来年からは緩く速度が遅くなり、2025年の下半期にも2%台の水準になると予想されている。 最近主要産油国の減産などによる原油価格の水準が予想より高くなっていることとイスラエル・パレスチナ戦争による原油価格の変動性が高くなっているから、場合によってはアメリカの物価が目標水準になるのが遅れる可能性もある。このように物価と雇用予測から考えるとアメリカの2024年以降の金利下げはスタートできてもその速度は遅く、非常に緩やかな下降線になる可能性が高い。

最近アメリカの金利が上げに伴い多くの国も金利を上げたが、日本だけは金利をあげられない。日本が金利を上げられない理由は色々あるが、大きな理由は負債である。 今の日本政府の負債は非常に深刻な状態で2023年度末には1,068兆円に上ると見込まれている。財政の持続可能性を見る上では、税収を生み出す元となる国の経済規模(GDP)に対して、総額でどのぐらいの借金をしているかが重要だが、日本の債務残高はGDPの2倍を超えており、主要先進国の中で最も高い水準にある。

財務省ホームページ(https://www.mof.go.jp/zaisei/index.htm)参照

負債に対する元金と利子だけで政府にはものすごい負担になっていて政府予算の25%に達している。この状態ではとても金利を上げられない。

日本経済新聞の「安いニッポン価格が示す停滞」では円安の影響で日本の企業と技術、人材までが海外に流れていくことについて記述している。日本の賃金は安い反面、海外の賃金が高いから日本を捨て、海外に出て行っている人材流出状況も政府は止められない状況だ。

野口 悠紀雄教授は「日本が先進国から脱落する日 “円安という麻薬”が日本を貧しくした‼」本を出しているし、有名経済・経営コンサルタント大前研一氏は、日本は徐々に死を待っていると警鐘を鳴らし、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。

歳出は一貫して伸び続ける一方、税収はバブル経済が崩壊した1990年度を境に伸び悩み、その差は大きく開いてしまった。また、その差は借金である公債の発行で穴埋めされてきた。最近では、新型コロナウイルス感染症等への対応のため、歳出が拡大しているのが現状だ。

財務省ホームページ(https://www.mof.go.jp/zaisei/index.htm)参照

ハーバド大学の教授エズラ・ヴォーゲルが「Japan as Number One: Lessons for America」という本を出すほど、1980年代までは日本は高度成長していた。だが、ここ30年間日本は4つの大きな経済的ダメージを受けた。

1つ目が1980年代後期から90年代初期にあったバブル経済の発生と崩壊である。株価は4~5倍に上昇し、不動産価額は3~4倍に膨れ上がったが、一気に暴落する。この衝撃は日本経済に非常に大きいダメージを与えた。

それに2つ目の1997年にあったアジア通貨危機が追い打ちをかけた。2年連続マイナス成長と失業率も5%まで上がっていた。この中、デフレーションが発生してこれを何とか回復しようと政府は努力したが、2008年に3つ目の経済危機が訪れる。リーマンショックによる世界金融危機である。日本も-5.4%という戦後最大の経済下落を経験する。この衝撃がどれほど大きかったかというと保守的な国民が2009年54年ぶりの自民党から民主党に政権交代をするほどであった。それに加え2011年に東日本大震災まで経験して国民はまた2012年自民党に政権を握らせることになった。再び自民党を選択して経済復興を目指すが4つ目の2020年コロナ衝撃に襲われた。周辺国よりも日本は色々な面で後れをとっていることが浮き彫りになった。

経済成長では中国と韓国にも逆転されることになって、一時は世界の先端を走っていた日本がガラパゴスと言われるほどアナログに執着していて世界のデジタル化の変化に追いつけない政策に国民は失望した。後れを取り戻すためにデジタル庁を作ったがイマイチな政策で大きな期待はできない。まだまだ時間がかかる気がする。

日本のバブルは政治家たちの強い親米感情と官僚が経済運用を間違ったこと、また不動産規制緩和、金融機関のずさんな貸し出し、株と不動産への過ぎた個人投資などがその要因だったとも言える。
このようなバブルは二度と作らない方が良い。またバブルを作ったとしても急な暴落だけはさける政策が必要だ。間違った政策によってバブルがはじけて今でも経済状況が好転されないことを知っているからこそ、しっかり経済対策を行うことが必要だ。
デフレーションの負のスパイラルから脱却することが非常に重要だ。ゼロ金利や量的緩和などの政策をやってきたが、結局国の負債だけが膨れ上がった。日本経済の悲観論をメディアが拡散したことも経済状況を悪化させて要因でもある。高度成長の後は低成長期があり、安定成長期があることを忘れている。
大概の先進国は2%前後の安定成長を持続する。例外がイタリアと日本だ。
日本は集団的悲観論でゼロ成長、マイナス成長していくと全国民が信じてしまい、実際に平均0.7%台の成長しかできてなかった。
低成長後の2%の安定成長が小さく見えるかも知れないが、先進国になってからの2%の成長は経済規模が大きいため大きな成長になる。30年後にはGDPは2倍になるのが2%成長((1.02)36)の秘密である。

これからの経済を好転させるためには、企業の好循環の歯車と家庭の好循環の歯車がはまって回る循環サイクルを作らないといけない。いままで企業の努力による革新とこれによる利益が発生し、この利益を次の革新のための投資にする循環はできていた。小泉政権や安倍政権の時は少し経済が上向いたこともあったがこの時も企業の対する好循環だけを強調して真の生活者である我々の一般家庭の好循環のための政策ができていなかった。アベノミクスの時も0.2~0.3%の成長しかできなく、実質経済成長よりは単に数字的経済成長を国民に見せて、経済が好転しているように欺いていたので今の円安はアベノミクスのつけとして回ってきているのだ。一般家庭も所得が高くなって消費が増加、自分ための力量投資により、生産性をあげる努力をする時に先進国の2%前後の安定的成長ができるのだ。

今になって政府は賃上げを促しているが、実際我々の給料は上がってないところがほとんどだ。物価は高くなって毎日の生活が苦しんでいる今こそ、もっと真の生活者のための強い賃上げ政策を期待している。